船長キャプテンだもの。





じー。

「―――でね、それで……ったら、――で…」

「そうなのか!?―――だなぁ!」

手にはミカン、特等席の上にいつものように陣取る船長は、先程から青鼻の船医殿と談笑しているをじっと眺めていた。

「あっ!!ルフィあんた!!まぁたあたしのミカンに手ェ出したわねっっ!!!」

ぼーっと皮付きミカンをかじり始めたルフィの様子に気付いたナミが、がなりたてた。

「…あ、悪ィ、ナミ」

腑抜け面でそう返すと、ナミが訝しんだ様子で、下からルフィの顔を覗き込んできた。

「…なあにアンタ、なんか悪いモンでも食べたの?」

「…ミカン?」

「ぶっ飛ばすわよ!!」

怒った勢いで、ナミはずかずかと行ってしまった。

…サンジ君、お茶!…はァい、ナミさんvv…という会話がキッチンから聞こえる。

それを耳の端に留めつつ、やはりぼーっとを眺めた。

――なんではいつもおれの傍にいないんだ??――

別に恋人同士というわけでもないはずが、ルフィとしては、

は麦わら海賊団のクルー
    ↓
麦わら海賊団の船長は自分
    ↓
は自分の傍にいるもの

…という、じゃあ他のクルーはどうなんだとか、色々ツッコミどころ満載な奇想天外思考を展開しているのだ。

勿論、本人は矛盾に気付きやしない。

何故そんな事を考え出したのかも。

答えの出ない疑問をぐるぐるさせるのはルフィの気性からして無理なので、ルフィは行動に出ることにした。


「…おーい、〜!」

「ん?なぁに〜?ルフィ」

「ちょっとこっち来〜い!」

「は〜い」

にこにこ微笑みながらやって来たをぐい、と船首に引っ張り上げてやる。

ルフィはぽふん、との肩に手をおくといきなり訊いてみた。

「お前、何でいつもおれの傍にいねェんだ?」

「…へ?何でって…何で?」

としてはルフィだけを避けてるつもりもないし、いつでも傍に、というのなら理由がわからない。

実の所、としても嬉しいことは嬉しい言葉なのだが、まあそれは置いておくとして。

「別にみんなと変わんないよ?」

そう言ったらルフィは、わかってねェなぁー、と溜息をついた。

はこの船のクルーなんだぞ?」

「うん」

「で、おれはこの船の船長だ」

「うん」

「だからはいつも傍にいるもんだろ?」

「…、何で??」

の頭には疑問符が浮かびまくりだ。

それもそうだろう、ルフィの思考回路を理解するなど、到底不可能だ。

「だって、ナミも、ロビンも、ゾロも、サンジも、ウソップも、チョッパーも、みんな私と同じクルーだよ?」

「ああ」

「私も皆と同じくらいルフィの傍にいるつもりだけど…」

「………んん?」

ようやくルフィは自分の矛盾に気付いたようで、首をこれでもか、というほど捻っている。

「「……。」」

ちょっとした沈黙の後、がクスリと笑みを漏らした。

「ねえ、なんでそんな事考えたの?」

「………なんでだ??」

今度はルフィが頭に疑問符を浮かべ始めた。

がクスクス笑い出すと、下の方から給仕に来たサンジの声がした。

「お〜い、クソゴムと…ちゅぁ〜んvv、おやつ持ってきたぜv」

「あ、ありがとう、サンジv」

「おっ、この匂いはプリンだな!!」

ルフィが船首から身軽に降りてプリンの強奪を試みるが、

「くぉら、クソゴム!レディに先に差し上げてからだ!!」

…サンジの足に止められ、あえなく玉砕。

「あ、ゴメンねルフィ。すぐ降りる…って、わっっ!!」

が降りようと身を乗り出すと、いきなりルフィの手が伸びてきて、ストンと降ろしてくれた。

「しししっ、これですぐ降りれたな!」

「てめェ、その役は今おれがやろうと…!、おっと、ちゃんにはレディ限定・特製プリンだよv」

「あ、ありがとう;;」

ギンッと鋭くルフィを睨むと、サンジはルフィにプリンを渡してさっさと引き返していった。

その場で二人で食べ始める。

「やっぱ、サンジの菓子は最高だな!」

「そうだね」

「…なぁ…そっちちょっとくれねェか…?」

「えー!?自分のはさっさと食べちゃったくせにぃ??」

「だってサンジのやつ特製だって言ってたじゃねェかよ〜」

「ざ〜んねんでした、"レディ"限定だってよ?」

「ちぇっ、イジワルだな〜は」


…ルフィが自分の気持ちに気付くのはもう少し先の話……





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可愛いルフィ大好きです!!(何だ突然)
おバカなルフィは可愛い!!
ってことでおバカなルフィが大好きです!!(三段論法?)