ギブ・アンド・テイク
「…こっ、これはっっ…!!」
ゴーイングメリー号・男部屋にて掃除中。
17歳。
いいモノを見つけてしまいましたv
急いで女部屋へ戻ったは、ナミとロビンに戦利品を見せた。
「眼鏡ー!??誰のよ、それ」
「えへへーvサンジのロッカーの中に入ってたんだvv」
「あら、そういえば着けていたことがあったわね、アラバスタで」
ロビンは少し前まで自分がいた組織が引き起こした大事件を思い出した。
「っていうか、ロッカーってあんた、全員の開けたわけじゃないでしょうね?」
ナミが眉根を寄せて聞いてくる。
は何の問題も無いかのように答えた。
「開けたよ?だって掃除だもん」
「いや、だからってロッカーはさすがにプライバシーってモンがあるじゃない」
「別に気になる物は何も無かったよ?」
「ま、実際そうでしょうけどねェ…あーあ、宝石の一欠片でも隠すとかしたらどうかしら。あいつらときたら」
「それもどうかと思うけれど」
ナミ的ポリシーにロビンがそっと突っ込みを入れる。
あまりのいつも過ぎるペースに、は飲み込まれかけた。
「…って、そうじゃないって!!コレ着けてるの見たことあるの!!?二人とも!!」
「「ええ、まあ」」
「ってか、ロビンあんた、見たことあるの?」
「ええ、ちらりとなら」
平然と答える二人には、なんてこと!と動揺を隠し切れずにいる。
その様子に、ナミは「あー、そっか」と言いながら、少し得意げにニヤリと笑って見せた。
「あんた見てないのよねぇ。乗り込んだのアラバスタの後だから」
「あー!!私の村がアラバスタより手前にあったならー!!!」
「自然の物に文句をいっても、どうにもならないと思うけど」
の悔しさはどこか違った方向に向きつつあるようだ。
「っていうか、サンジくんいつも着けてないし、どうせ伊達でしょ?プリンス仕様とかなんとかの」
「いーなァプリンス!!じゃっ、早速行ってくる!!」
「行くって、何処へ?」
「勿論、キッチン!!」
言うなりは電光石火の如く女部屋を飛び出していった。
一日の大半を船員に出す料理の仕込みや後片付けに費やすサンジは、寝るときと風呂に入るときと女性に召集されるとき以外の大半はキッチンにいる。
「おっ邪魔しまーす!」
が入ってキッチンを見渡すと、そこにはまた何かを作っているサンジの姿が。
が入って来たのに気付くと、サンジはキリのいい所で中断し、冷蔵庫に入れて、キッチンに入って来たにならってテーブルについた。
位置は丁度とお向かい。
「掃除は終わったのかい?」
「うん、ついさっき」
断固フェミニストを主張するサンジとしては、無論レディーであるが掃除をするというのは賛成しがたいのだが、本人たっての希望とあって、女性の希望を否定するわけにもいかず、の掃除を認めていた。
「でね、いいモノ見つけたんだv」
「いいモノ?」
ふっふっふ、とが笑いながら眼鏡を取り出す。
「眼鏡でーすっv」
「それ、おれのだろ?参ったな、持ってきたのか」
「それについては謝る、ごめんっ!でもこれはカノジョとしては放っておけませんとも!!」
は蕩けそうな顔で眼鏡を眺めている。
サンジはそんなの表情を頬杖をついて見ていた。
「へェ…眼鏡がそんなに好きなの?」
「『眼鏡』じゃなくて、『好きな人が着ける眼鏡』が好きなの!!
お願いっ、着けて見せて!!」
きらきらと輝く瞳をサンジに向けた。
もちろん、そんな瞳を向けなくとも、レディーの、それも愛するの望みであるなら何でもきくサンジ。
二つ返事で了承してくれた。
放置していた為に、眼鏡に少しかぶっていたホコリを息で軽く散らすと、サンジは眼鏡を掛けて見せた。
その様子に、は左手で、鉄の匂いがする汁が出てくるのを察した鼻を押さえながら、「グッジョブ!」といわんばかりに親指を突き出した。
「カッコいい〜!!いつもそれで居ればいいのに〜」
「お望みとあらば、そうしましょうか?けれどそれには…」
企み満点笑顔で、サンジが眼鏡を掛けたまま額を突き合わせた。
「…それなりの対価が必要ですが」
「へっ、対価??」
いきなり近づいたプリンス仕様サンジに蕩けそうになりながら、突拍子もないその言葉には目を少し見開いた。
「な、何をすればいいの…?」
「そうだなァ…」
サンジは再び椅子に凭れ、思案顔で数秒固まった後、ふと立ち上がって先程まで作っていた代物を冷蔵庫から取り出した。
それは、綺麗に皿に盛り付けられて、本来以上に美味しそうに見える。
「うわ、美味しそうvvみかんシャーベット??」
「そ。みかんはやっぱり冬が一番美味いからな。それにナミさんから貰い受けたヤツだから新鮮さと美味さにおいては最高級だぜ。
冬に冷たいのもどうかと思うが、あったかい部屋でってのもオツだろ?」
「うん、冬アイスも冬シャーベットも大好き〜vv
…ところで、これと対価とどういう関係が?」
そう聞くと、サンジはおもむろにスプーンを取り出してきた。
「コイツ、実は一品限りの特製品なんだ」
「えっ、勿体無い!!もっと山ほど作って保存しとくべきだよ!!?」
は心底残念そうに、一品限りのシャーベットを脳裏に焼き付けている。
「いや…これは、一品限りじゃねェと価値が無ェの」
「何で??」
「一口どうぞ」
サンジが質問に答える前にスプーンを差し出す。
はスプーンを受け取ると一口、口に放り込んだ。
「美味いか?」
味わうのに必死で口が開けないは、無言で何度も首を縦に振った。
それを見て、サンジがの顔が綻ぶ。
「そいつは、の為だけに作った限定品なんだ」
「…えっ!!!」
ようやく一口目を飲み下したが前より大きく目を見開いた。
「ご馳走様」
ニカリと笑うと、サンジはそう言った。
「あれ、私なんかあげたっけ」
「コックにとっては、料理を美味そうに食ってもらうことが何より嬉しいんだよ。
コックがおれであり、客がであるなら、尚更な」
それが対価、と言ってサンジはみかんシャーベットに合いそうな紅茶を棚から探し始めた。
はシャーベットを幸せそうにつつきながら、溜息をつく。
「でも本当に一品限りなんて勿体無いなぁ。また作って欲しいのに」
「お望みならば、いくらでも。今度は対価に何を貰おうか」
「あ、じゃあ今度はいちごシャーベット味見してあげる!」
「またシャーベットかよ。というよりお前が決めんなって」
「あとはね、パイナップルと…あ、バナナとかもいけるかも…」
が帰ったあとのキッチンにて。
サンジは煙草をふかして、椅子の背もたれに体重をかけた。
「…あーあ、おれも甘ェなァ…」
対価にかこつけてキスの一つでもせびろうとした筈だったのに、と最後の最後に作戦を違えた自らに苦笑する。
「…ま、それはまた今度でいいか」
そうして暫く、ようやく外した眼鏡を手で弄んでいた。
その後。
「あれーサンジ、眼鏡は??」
夕食時にキッチンへ集まると、が残念そうに声を上げた。
「あの対価は、あの時掛けた一回分」
皿をセッティングしながら答える。
「えー!!?」
「それに、いつも全員の前で着けてるより、たまに二人で居るときに掛けた方が価値が上がるだろ?」
「…それはいえてる」
確かに、とは力強く頷いた。
「ハイハイ、二人で夕食前にいちゃつくのはやめなさいね。飢えた敵がすぐそこにいるから」
席に着いたナミが呆れ顔で誕生日席にいる我等が船長を指差す。
当の本人はフォークとナイフをぶつけて、待ちきれないと言わんばかりに騒がしい。
「サンジー!!メシまだか〜!!?」
「今セッティング中だ、もう少し待ってろ!!」
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Mr.プリンスにメロメロな水乃ですvv
自らの願望、妄想を全てコレに注ぎ込みました!!
あそこまで似合ってしまうと最早犯罪(笑)