ご機嫌如何?





「わーるかったって、青子〜!」

「知らないッ、快斗なんか!」

「オイ、ちょっと…」

ぷいっとそっぽを向く青子。

快斗は必死に取り繕おうとしている。


事の発端は昨日。

1ヶ月前からトロピカルランドにいく予定が入っていたのに、急遽ビッグジュエルの情報が入り快斗はつい、そちらへ行ってしまったのだ。

翌日である今日、快斗がご機嫌伺いに青子の家へ来てみると、「何しにきたの?」と睨まれる始末。

これは相当根が深いな、と快斗は心してご機嫌取りに掛かったのだったが。

「快斗なんか、ずっと宝石と仲良くしてれば良いじゃない!」

「宝石に妬くなよ…」

「妬いてないもんっ!」

青子はさっきから快斗を全く見ようとしない。

快斗は仕方ないといった様子で切り札をポケットから取り出した。

顔には不敵な笑みが浮かんでいる。

まるでこんな展開を待っていたかのようだ。

「…昨日行ってきたデパートで青子が欲しいって言ってたヤツ買ってきたんだけどなー」

ぴくっ。

青子が反応したのが見てとれる。

そう、昨日盗みに行った場所はデパートの展示場。

青子が拗ねてしまうのを見越していた快斗は予め土産を用意していたのだった。

快斗はポケットから取り出した小包を溜め息混じりに指先で弄ぶ。

それは巧みな仕草で青子に見せ付けられていた。

青子がちらっちらっと目をこちらに泳がせる。

青子が好きなアクセサリーショップの袋が視界に入った。

青子は小包を視界に入れたり外したりして、長らく葛藤していたようだが、最終的に快斗に向き直った。

快斗はニンマリ笑って訊く。

「欲しい?」

「…う〜…」

渋々といった様子でこくりと頷く。

その顔は悔しさと恥ずかしさで赤く染まっている。

その様子に満足して快斗は青子の両手に小包を落とした。

少し身を屈めて青子の顔を覗き込む。

「おはよう青子。ご機嫌如何?」

「…次は無いんだから」

嬉しい顔を必死に押し隠して負け惜しみを言う。

快斗は勝ち誇った表情で笑ったのだった。





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