愛の逃避行?
12月24日。
明日に一大イベントを『二つ』控えたクルー達は、皆船から出払っていた。
まさに良いタイミングで、船は昨日から新たな陸地にたどり着いており、物品調達には事欠かない。
そこで、初めに船番をとサンジの二人で担当し、一番早く帰ってきたクルーと入れ替わりに買い出しに行く事になっていた。
その間にこの船きっての名コックはキッチンで下準備に勤しんでいる。
サンジの振るうフライパンの上では海老が踊り、テーブルの上にはこれから美しく彩ってもらうのを待つ、スポンジとフルーツが2セット。
はそれを楽しげに眺めていた。
ところで…
「ねえ、サンジ」
「ん?」
「なんで…ケーキ二つ作るの?」
エビチリを皿に盛り付けくるりと振り向いたサンジがああ、とテーブルの上のスポンジを眺めると、
「イベントが二つあるからな。ちゃんと二つないと、暴動起こすから、奴ら」
「なーるほど」
「片っぽは一応主役であるチョッパーの角の一本でも飾り付けてェと思ったんだが…」
「え゙っっ!!?」
「冗談だよ」
思わず真に受けて、ぷっと吹き出されてしまった。
むすっと膨れてからもう一つ。
「あと、サンジ」
「何?」
「何で明日やるのに今から準備…――もっ!?」
すかさず右手で口をふさがれ、サンジが左手でシィ、として見せてから答えた。
「それは、やってからのお楽しみv」
それだけ言うと、パッと手が離れる。
その時、キッチンの扉が音を立てた。
「おう、帰ったぞ」
振り向くとゾロが大きな紙袋を引っさげていた。
その様を見ると例の如くサンジが喧嘩をふっかける。
「何だ?クソマリモマンが迷子にならずに一番乗りたぁ、天変地異の前触れか?」
「ああん?こんな事で天変地異が分かるたぁ、テメェの脳ミソは随分短絡的だな」
「ああそうか、悪かった。天変地異の方が発生率が高ェか」
「んだと!?」
「やんのか、コラ!?」
そして例の如く顔を突き合わせ、青筋を立てる。
でもはっきり言って今はそんな時間ないので。
ゴイィン!!
「お邪魔様〜v」
呆気にとられるゾロを放置、ふしゅる〜、と頭にタンコブと湯気を上らせたサンジを引きずり、甲板から町へと繰り出した。
「…あれ、出てくときにいたのナミだよね?だからゾロあんなに荷物抱えてたのか」
「何ィ!?ナミさんの荷物持ちを請け負おうなんざ、あのクソマリモ、身の程知らずにも程が…」
「…サンジ」
ハッ、とサンジはから燻り出てくる負のオーラを感じ取り、直ぐに口を噤んだ。
「いや、俺はの買い物に一緒できるだけで、身に余る幸せです!!」
「…ホントに?」
「当然ですとも、マドモアゼル」
「…まぁ、仕方ないか」
サンジの女好きは今に始まったわけじゃない、と溜息一つで水に流してやることにする。
プレゼント選び、という名目の下に、二人はウィンドウショッピングを一頻り楽しんだのだった。
帰って来て、サンジがまたキッチンで支度を始めると、ルフィが輝かしい事この上ない顔で寄って来た。
「なぁなぁサンジ〜」
「ケーキは、明日の分だぞ」
質問をする間もなく答えられると、ルフィはめげる事無くまた訊いた。
「ちょっと位いいじゃねェか」
「駄ー目だ。ケーキは明日のパーティ用だし、テメェのちょっとは信用できねェ」
そこまで言われてようやくぶすー、とふくれたルフィは、それでもちょっと生クリームの奪取を図ってキッチンから蹴りだされた。
夜。
「どうせ、朝っぱらから暴れまわるんだから早く寝ないとね!寝不足はお肌の敵よ!!」
とさっさと寝るナミに続いて、ロビンともすぐ床についた。
キィ…。
『…ん…?誰だろこんな夜中に…もしかしてサンタさん??』
年齢不相応なことを寝ぼけ気味な頭で考えていると、予期せぬ来客にの眠気は吹っ飛んだ。
「さささ、サンジっ!!?な、何でこんな夜中に…まっ、まさか、よっ、よよよ…」
「オイオイオイ;;」
夜這い!!?と言いかけると、サンジは昼間のように右手をの口の上、左手を自分の口元にやってしーっと言った。
(みんな起きちまうだろ。…、チョッパーへのプレゼントは?)
(あるけど…何で?)
(よし、じゃあそれ持ってろよ…)
(だから何で…って、うひゃっっ!)
いきなり抱きかかえられて思わず声が出そうになるのを手で押さえて、はプレゼントを握り締めた。
女部屋を出て慎重な仕草で扉を閉め、そのまま男部屋へ行くと、サンジはのプレゼントをチョッパーの枕元へ添え、部屋を出た。
「え、だってプレゼントは明日手渡しで…」
「チョッパーにはわりィが、俺たちは欠席だな」
「な、何で??」
サンジはクスリと笑うと、抱きかかえたの耳元に口を寄せて、
「逃避行。」
と囁いた。
「えっっ!?えっ、あっ、だから料理…!!」
「そういう事」
「よ、用意周到だね…」
「だって」
クリスマスくらい二人でいてェだろ?
と訊かれると、思わず赤面するのが止められなくなる。
そのまま船から降りると、サンジが切り出した。
「さて、何処に行きましょうか、プリンセス?」
「…って、言っても、こんな夜中じゃあどこのお店も…」
「大丈夫、24時間絶賛営業中の店の集落探しといた」
「な、なんて用意周到な…」
「レディには無駄な心配をさせないのが紳士ってもんだぜ?」
そしてそのまま、は現在自分が人から見られたら、いかに恥ずかしいかという体勢にあることを忘れて、サンジに連れられるまま町に赴くのだった。
翌朝…
「大変だ!!サンジがいねェぞ!!メシ〜っ!!!」
「あんた、他に言うことないの!?」
「大丈夫よ、ちゃんと作り置きしてあるわ。この手紙は…私達宛てね」
「どうせ愛のポエム入り謝罪文でしょ?」
「うわぁ、お、おれの枕元にプレゼントがあったぞっっ!!」
「良かったな、チョッパー!!それはきっとサンタさんがくれたんだぜ」
「ホントか、ウソップ!!」
「オイ、冗談も程々にしとけ。そりゃあのラブコックとの分だろ」
「それでもおれ、嬉しいぞ!!うわ〜、ありがとう、サンジ、!!」
「船医さん、本人が帰ってきてから言ったほうがいいんじゃない?」
「そうだな!…あれ、でも二人はどこ行っちゃったんだ?」
「ちっちっち…分かってねェな、チョッパー…あの二人のことだ。手に手を取り合って駆け落ちに決まってんじゃねェか…」
「かっ、駆け落ちーっっ!!?じゃあ、もうあの二人、帰ってこないのか!!?」
「カケオチって何だぁ?美味いモンか??」
「うーるーさーいわよ、そこっ!!あの周りの目を憚らないバカップルは放っといて、さっさと朝ごはんにするわよ!」
「ばかっぷるって何だ??パイナップルの親戚か??」
「お前は黙らんかい!!」
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クリスマス夢ですvv
まさに「夢小説」の名の通り、水乃の夢叶えまくりですvv
クリスマスと正月と、記念夢を制覇するのは結構忙しいですね;;
そんでもってバレンタインにホワイトデーに豆撒きに…(←名前ど忘れ)
……あ、節分だ。
冬ってイベント多いですねぇ、こうしてみると。
ルフィかサンジかどっちかの夢を書こうと考えて、クリスマスはサンジ!正月はルフィ!という知らぬ間に築きあげられた確固たる思念の下、とりあえずサンジ夢を書いてみました。
よくよく考えるとルフィとクリスマスとか、サンジとお正月とか、な〜んかムードがかみ合わない気がしてならない…