運命なんて






「こーんにーちは〜、というか、おはようございまーす」

「あらぁ、ちゃん!いらっしゃい。ごめんなさいねぇ?ゆーちゃん、まだ今起きたばっかりで部屋で着替えてるとこなのよ。
 ちょっと上がって待っててね」

「はーい、おじゃまします」

大学と高校に二人の息子を持つ母とは思えぬ若さの渋谷母に連れられて、リビングへお邪魔する。

今日は野球の試合を見に行く予定。

例によって、またわくわくしすぎで眠れなかった結果の寝坊なのだろう。天井の上からは、大急ぎで支度をする足音が聞こえてくる。

まったく、高校生だというのに子供みたいなんだから。

苦笑しながらソファに座らせてもらい、鞄から昨日友人に借りた本を取り出す。

よくあるティーンズ向け雑誌だ。

ファッションというよりもおまけのほうに惹かれて、ついつい借りてきてしまった。

これまたよくある、彼氏との相性占い的なコーナーだ。

この雑誌にあるのは、『今日の彼氏との相性』。

この雑誌を開くのがいつだかも判らないのに。

それでもなんとなく見てしまうのが女性の本能ってものだろう。

別に気にならないという意見は聞こえないふりをしておく。

鼻歌まじりにパラパラっとページをめくり、血液型と生年月日からタイプを割り出す。

む。

本日はあまり相性がよろしくないようだ。

「ホントごめんな、って…あれ、なに見てんの」

丁度その時、階段を駆け下りてきた彼がリビングの扉を無造作に開けてソファのところへ駆け寄ってきた。

私が読んでいた雑誌に気を取られて、謝罪もそこそこに肩越しに覗きこんでくる。

「ん、これ?相性占い」

「あー、占いね」

内容が判ったところで早いとこ朝食を摂ってしまおうと、目玉焼きと食パンと牛乳の載ったテーブルにつく。

私も雑誌を手にその向かいに座った。

「で、どうだった?」

「え?」

「占いの結果。もう見たんじゃねえの?」

食パンにかじりつきながら彼が訊いてくる。占いなんか信じない主義のはずなのに。

こういう優しいところが彼の周りの人々の心を惹き付けていく。

「んー、良くなかった」

今回もその優しさに甘えてしまおうと、あえて残念そうに結果を告げる。

そこまで酷い結果でもなかったのに、最悪〜とうなだれて見せた。

案の定、彼は慌てた様子で気のきく台詞をなんとか引き出そうと、身振り手振りを交えて話し始める。

といっても、ただあたふたして手を振り回すだけなのだが。

「あ、えーと、あのさっ、占いなんて当たるも八卦、当たらぬも八卦って言うだろっ!?その結果を見た人がどう行動するかで未来なんてどうにでも変わるっていうかっ!」

「うん」

必死に優しい言葉を掛けようとする様子に、思わず頬がゆるむ。

「それにさっ」

彼は口の中にあったパンを呑み込んで、少ない語彙の中から思いつく限りの言葉を尽くしていった。

「それにおれ、運命とかってよくわかんねえケドっ、なんていうの?星座がどうとか、血液型がどうとか、この人の前世がなんとかーとかさ。


それが何であっても、おれがを好きになったらそれを運命っていうんじゃねえの?」


そこまで聞いてしまって、よっぽど私の顔がゆるんでいたのだろう。私の表情に気づいて彼は顔を真っ赤にした。

「えっ、おれもしかして、今スゴイ恥ずかしいこと言った!?うわどうしよう、なんかコンラッド並みにスゴイコト言っちゃった気がする」

「…うん、そうだね」

そう答えると、彼は穴があったら入りたい〜と言いだしたけど。

そうじゃなくて。同意したのは、『好きになったらそれを運命っていうんじゃねえの?』って事。


運命なんて、そんなものなのかもねって。






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うわ〜、砂吐けるよ。
一番恥ずかしいことをしてるのはゆーちゃんでなく書いてる私自信ですね(滝汗)。
ところで二回連続でサムイこと言う要員として使っちゃってゴメンねコンラッド(笑)。
なんかノリが原作のとある番外編っぽくなってるよ〜;;ぱくりっぽくってゴメンナサイ;;
ゆーちゃんのこういうお人よしでおばかなところが大好きですw勢いで全てつるっと言っちゃうあたりww
ゆーちゃんは天然の女ったらしです。