数時間後…

「ふう…出来たぁ!!」

「あら、いい出来じゃない?絵描きさん」

「そうかなぁ??ロビンの方が美味しそうだけど…」

ちゃんのもロビンちゃんのもナミさんのも、どれも天に昇る美味さに決まってるさァvv」

「ふふっ、ありがとサンジくんv」

「心の底までメロリンラ〜ブvvv」

ナミに笑顔で返されると、サンジは体をへにゃへにゃにして倒れてしまった。

三人の目の前にはそれぞれのセンスで作り上げたショートケーキ(デコレーション済み)が置かれている。

ナミは具にミカンを入れ、ロビンは本を形どる砂糖菓子を載せ、はチョコペンで様々な色をアピールしたものだ。

「さて、後片付けだけれど…」

「サンジくん、宜しくねv」

「喜んで〜vv」

「えっ、でも私達が使ったんだし…」

「いいじゃない、快くやってくれてるんだし。それより、ケーキ渡しに行くわよ!」

ナミはそういうと、一旦の首に腕をかけてずりずりとキッチンから退却した。

ナミ達が出てくるのを発見すると、ルフィが目を輝かせる。

「ケーキ出来たのか〜ぁ!!?」

「うるさいっ!!ちょっと黙ってなさい!」

そのままミカン畑の裏へ回り込むと、三人でしゃがみ込み、再び会議。

(いーい?サンジくんが仕事を終えたらキッチンに行って渡すのよ!)

(う、うん…)

(じゃあ、まず私達からね)

すたすたと二人が出て行くのと共に、は顔を出して甲板の様子を覗き見た。


まずナミ。

「はーい、ウソップ。私からの気・持・ちv」(おちょくる気満々。)

「えっ、おれにくれんのか!?」(ちょっとドギマギ)

「お礼は三倍返しでいいわよv」(悪魔の微笑み)

「って、お返しすんのかよ!!」(一気に冷める一瞬の恋。)

「あったり前じゃない!」(最早お返ししか頭に無い。)


次にロビン。

「はい、船医さん」(裏を読み取れない微笑み)

「へっっ!?ロビン、おれに??」(ちょっとドギマギ)

「ええ。あまり味に自信はないけれど」(ひたすら裏を読み取れない微笑み)

「うっ、嬉しくねェぞ、コンニャロがぁ〜vv」(純粋に喜ぶ。)

「ふふっ」(母性的微笑み)


「ナミー、ロビンー、おれの分は〜ぁ??」

「無いわよ!!あんたルール聞いてなかったの!!?」

「聞いても頭に入らなかったんだと思うわ、あの様子じゃ」

「まァいいじゃねェか。面倒なイベントに巻き込まれなくてよ」

「面倒とは何よ!失礼ねぇ!!」

ルフィは不満たらたらで、ゾロはまるで興味なし。


…もうそろそろ、いいかな。

そろーりそろりとキッチンへ足を運ぶと、ルフィがそれを目ざとく見つける。

「あっ!ケーキ!!ケーキ食わせてくれ!!」

「往生際が悪いわよ、ルフィ!!」

腕を伸ばすルフィから、ダッシュで逃げ、そのままキッチンへ飛び込む。

そこには、一仕事終えてテーブルで一服するコックの姿が。

「…どうしたんだい?ちゃん」

「あ、サンジ…!あの、これ…」

「これは…、おれに…?」

てっきり出ていっちまったから他の奴らに渡したのかと…とサンジが半ば困惑、半ば照れ顔で頭を掻く。

「ありがとう、ちゃん」

「う、ううん!サンジの味には劣るけど」

サンジは話しながら包みを開け、先程自分が手伝ったケーキにフォークをつける。

一口食べると幸せそうに微笑んだ。

「いや…最高のケーキだ。こんなにクソ美味ェモン初めてだぜ」

「本当に〜?」

「なんなら、食ってみるかい?」

ほら、とフォークに一口分載せて口元へ持ってくる。

はそれだけで昇天しそうな勢いだが、必死で堪えてそれを口にした。

「…美味しい!」

「だろ?…心は、最高の調味料さ。作り手の気持ちがこもっていればいる程、美味くなる」

その言葉に、はぎくり、と身を震わせた。

ば…バレてる??本命…

「…たとえ義理でもな」

そう言ってサンジはにかっと笑ってみせた。

言葉を鵜呑みにするなら、本命だとはバレていないらしい。

「で?あとの二人は誰に渡したんだい?」

「あ、ナミがウソップで、ロビンがチョッパー…」

「へェ…本命だったら、羨ましい限りだな」

…それは、ナミかロビンが自分に本命ケーキを渡してくれればよかったのに、というニュアンスが入っているのか?

…それとも、もし自分が本命でなかった時を考えてのみ発した言葉なのか?

聞きたいけど、聞くとバレる気がする…

「…じゃ、部屋に戻るね」

「ああ、ごちそうさまでした」



女部屋…

「…とりあえず、その場で告白は無かったってわけね??」

「うん…」

「気付いてる様子は無かった?」

「…多分
 でも、これで告白されても、ただ答えが知りたいだけかもしれない…っていうか、むしろその方が確率高いんじゃないかなぁ…」

「バッカねぇ。いくらサンジくんでも、いや、サンジくんだからこそ、レディに対してそんな理由で軽々しく告白したりしないわ。
 告白してきたら完璧、脈アリよ!!」

「私も、コックさん見かけによらず堅い人だから、航海士さんの推測はあながち間違いではないと思うわ」

「そうかな…」

「とりあえず、ここ数日が勝負よ!!ここでサンジくんの気持ち、白黒はっきりつけるのよ!」





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