My reserved seat.
「…好きです…」
一生懸命勇気を絞り出していったであろうその言葉に、快斗は一抹の申し訳なさを感じつつ、居心地悪そうに首筋を掻いて答えた。
「……ごめんなさい」
学校の始業を知らせるベルが、鳴った。
「快斗、おそーい!」
HRに遅れて入ってきた快斗を出迎えたのは、幼なじみのその第一声だった。
「しゃーねーだろ?俺にだって色々…」
「始業には間に合うようにしないと、相手の子にも迷惑かけちゃうよ?」
へーへー、と言いかけて快斗は一時停止した。
「…なんでお前が知ってんだよ??」
「校門入るときにちらっと見えたんだもん」
しまった。
周囲から見えない場所を慎重に選んだはずが、見えていたとは。
相手の子にも悪いことしたな、と思っていると、青子が身を乗り出して訊いてきた。
「ねぇねぇ、あの子って確か隣のクラスで可愛いって評判の子でしょ?なんて答えたの??」
「断ったよ」
わずかに目を逸らして答えた快斗に、青子は「えー、もったいない」と我が事のように惜しんだ。
「…でも、正解だったかもね!」
「あん?」
「だって快斗にはもったいなさすぎるもん」
「けっ、テメーに言われたかねーよ、アホ子」
「なによー!」
そんなんだから、彼女出来ないのよ、なんてさっき告白されていたのを棚にあげて剥れている青子の脇で、快斗はぼそっと呟いた。
「…お前以外に言われても嬉しかねぇんだよ…」
もしかしたら一生ないかもしれないが。
「ん?何か言った??」
「いや、青子は一度も告られたコトねーんだろーなって思っただけだよ」
「何よー!青子だって…」
「あんのかよ?」
ムキになる青子に意外そうに快斗が聞くと、青子は声のトーンと共に徐々に顔を落としていく。
「ない…けど……」
「ま、青子に告るヤツなんざ、よっぽどの物好きぐれーだろ」
「ふんだ、快斗の意地悪!」
あたりめーだろ。
青子は気づいてないけど、青子に気があるヤツって結構いる。
でも絶対に譲れないし、それを青子に無駄に気付かせるつもりもない。
青子に告白する物好き第一号は俺だってずっと昔から決めてんだから。
他のヤツに告白なんかさせるかよ。
「あ、なんか快斗笑ってる〜、気持ち悪い」
「うるせっ!」
俺が告白するまでは空白の、
俺の指定席。
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