告白してくれたとき。

言われて僕は驚いたけど、

自分を好きでいてくれる人が居ると分かって。

自分を気にかけてくれる人が居ると分かって。

やっぱり僕は嬉しかったんだよ。






宙ぶらりん・4






「ねえ、この映画知ってる?」

帰り道の途中、そう言ってが取り出したのは、最近TVで大々的に宣伝されている現在公開中の映画のチラシだった。

最近人気のある小説を元にしたものだ。

「あ、その原作なら読みました」

「本当?どうだった??」

「結構面白かったですよ」

「そっかぁ。…ねぇ、この映画見に行ってみない?」

「これですか?」

「うん。あ、でもストーリー知ってたら面白くないかな」

「いえ、僕も見たいと思ってたので。行きましょうか」

「ホント!?じゃあ、何日にしよっか。割引がある日がいいよねぇ」

そう言って携帯で映画館の情報を調べてみると、大抵の割引は平日に被っていた。

ファーストデー、ファミリーデー、レディースデー…

「うーん、休日は難しいかなぁ…あ、曜日指定が無いのがある」

その先を指で辿ってみると…

そこには"カップル割引"の文字。

その文字に思わずは固まった。

はっと気付くと、横で一緒に携帯の画面を見ている柳。

「…み、見た??」

「…はい;;」

柳もちょっと顔を赤くして目線を泳がせた。

もう一度カップル割引の所に目を通す。

結構割安だ。

(いやでも、それは流石に柳くんに悪いというか、付き合ってもいないのに…)

携帯片手にうんうん唸っていると、柳は顔を赤くしたまま、ぽつりと言った。

「…行きましょうか、カップル割引で」

「えっっ!!?本当に!??」

「はい、あの……さんがよければ、ですけど」

「わっ、私は全然OKですっっ!」

「じゃあ、今度の日曜にでも」

「う、うん」

そう言いながら、二人とも顔を真っ赤にしてどうにも目を合わせられないのだった。





次の日曜日。

「うわ〜、柳くんと映画だっ!」

しかも、カップル割引。

浮かない程度に張り切ってお洒落をして、は緊張でカチンコチンのまま家を出た。



「…お待たせっ!柳くん、早いね!私の方が先かと思った。待たせちゃった?」

「いえ。さんを待たせるわけにはいかないですから」

「あ、ありがとう」

柳の言葉に思わず照れてしまい、は視線を下へ向けた。

待ち合わせ場所は映画館へ歩いてすぐのところだった。

柳とで、というだけでなく、はカップル割引など生まれてこの方経験が無かったので、行く前からそわそわし通しだ。

「…どうしよう。カップルじゃないってバレたら」

普通に考えたら年相応の男女二人でいれば疑われるハズもないのだが。

がそう呟くと、不意に手が触れた感覚がして、そのままぎゅっと握られた。

「へっ!?」

「この方がカップルに見えますよ」

「そ、そだね」

にっこり柳に微笑われて、はすっかり真っ赤に染め上がってしまった。



映画館を出て駅で別れるまで、手は繋がれたままだった。





…――帰ってからも、手の感覚が忘れられない。

柳くんの優しさに、いつも甘えてしまう。

他の子にもこうするのかな。それとも、私だけ?

柳くんは優しい人だから、

だんだん期待が大きくなってきて。

期待して待ってみようって思ったけど、時々やっぱり重くてこぼれ落ちそうになる。







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