夢をかなえるその日まで。







久々に沖合で碇を下ろしたメリー号は活気ある小さな村を横目に、波に小さく身を委ねている。

ナミの周りへ集まって、船員一人ひとりに小遣いを配った。

「いーい?ログが溜まるのは3時間後みたいだから、それまでに戻って来ること!」

『はーい』

「じゃ、ゾロ。船番よろしく」

「おう」

ある者は武器の材料を調達しに、ある者は食料の調達に、またある者は自分の興味のある物や欲しい物を探しに個々に散っていった。

「はぁ〜あ、いい天気!」

これと言って買う目星をつけていないは、とりあえず大通りを散策することにした。

比較的小さな町で、店はどれも露店風なので、しばしば話しかけてくる気の良いおじさんやおばさんと談笑しながら突き当たりまで行くと、小高い丘があって、そこに見覚えのあるマークがはためいていた。

「…カモメっっ!!?」

思わずそのマークを目にして身を竦ませてしまう。

静かにこのまま歩いていれば見つかる可能性も低いだろうと、回れ右をしてそそくさとその場を立ち去った。

帰ってみると、ルフィを除く全員が船へ戻ってきていた。

「あっ、が帰ってきたぞ!!」

「あのっ、皆、この町…!!」

「あァ、言わなくても分かってる」

「あとはルフィだけね。あいつ、海軍呼び寄せてくるのは大得意だから、船まで連れて来ないといいんだけど」

「その前に、船が見つかっちゃヤバイんじゃねェのか!!?」

「航海士さん、とりあえずこの船を隠した方がいいんじゃないかしら」

「そうね…、こっちが船を隠してる間にルフィを迎えにいってきてくれる?隠す場所を地図に記しておくから。あ、海軍に追われてたらまいて来んのよ!!」

「わかった!」

ナミが地図を広げ、即座に船を隠す場所を決め、印をつけてに手渡す。

「じゃ、よろしく!」

「うんっ」

は地図を手に持って船を飛び出した。




「あれェ???」

ルフィはキョロキョロと辺りを見回していた。

さっきまで居たところとは明らかに雰囲気が違う。

「くっそー、カッコいいバッタ追っかけてたら、居なくなっちまった。…それにしても、ココどこだ??どっち行きゃ飯屋着くかなァ〜?」

因みにここは裏通り。

どんなに鼻を利かせても漂うのは乾いた砂埃だけ。

と、そこへ、なにやら紙を持った男が現れた。

男はふと立ち止まると、壁にその紙を貼り付け始める。

ルフィが歩み寄って後ろから覗き込む。

「おっ。おれじゃねェか。いや〜、相変わらず良く撮れてんなァ」

感心してそう言うと、男はビクリと身を竦ませてから、紙とルフィの顔を交互に見た。

「…むっっ、」

「む?」

「麦わらだァ!!!」

「うお、やべっ」

男は海軍だったようで、ルフィと知るや否や、仲間を大声で呼び寄せ始めた。

ルフィは麦わら帽子を押さえ、一目散にその場から退散する。




「…そっちだー!!行ったぞっ!!」

「待てェ!!」

ふと耳を澄ませるとそんな怒号が聞こえてくる。

「…あっちか」

はぁ、と溜息をついて、は怒号のするほうへ走っていった。




次々と襲ってくるピストルや刀や弓矢をかわしつつ、ルフィは縦横無尽に走り回る。

「しつっけェなー、お前ら」

後ろを振り返りつつ建物の角で曲がると、いきなり脇から腕を引っ張られた。

「うわっととっ」

地面に強く尻餅をつくと、多くの樽の間に見慣れた顔を見つけた。

〜!」

「静かにっ!!」

ごいん、と頭を殴って黙らせられる。

海軍御一行が通り過ぎたのを確認して、が息をついた。

「どうしたんだ?お前も追われてんのか??」

「違うわよ、海軍に見つかるといけないから船を移動させてて、私はルフィを迎えに…って……」

はっとしてが両手を見ると、両手は何も持たず、フリーな状態だった。

「無いっっ!!!」

「何が??」

「船の場所を書いた地図!!」

事の顛末をルフィに話す。

ルフィは腕を組んで話を聞いていたが、最後に一言、「ふーん」で済ませてしまった。

「"ふーん"って、ヤバイのよ!!?ちょっとは焦りなさいよ!!」

「だって、無くしたのはだろ?おれが無くしたんじゃないから、焦るのはでいいじゃねェか」

「…それもそうね」

ルフィの天然に流されていることに気付かずに、はとりあえずの対策を講じる。

「とりあえず、岸に沿って歩くしかないか…」

そうすればいつかはたどり着くはず。

「なんだ?行くのか?」

「うん。絶対に目立たないでね!!」

「うしっ、分かった!」


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